難度海どんぶらこブログ

つれづれ書いていきます。

2023年度病理専門医試験受験体験記

# 病理医 # 日本専門医機構 # 臨床研修医 # 医学生 # 日本病理学会 # 専攻医 # 専門研修

 

需要がある話だと思うのでここで供養しておきます。必要な人には貴重な情報だと思います。感謝しすぎて惚れちゃったかわいい女の子は、ぜひラブレターをください。ブサイクと男の子は、ぜひお金かファンレターで僕を支援してください。

 

2023年9月1日(金)

家をゆっくり出発して16時ごろに布田の東横インにチェックイン。荷物を置いて調布駅まで歩いて、駅近のマルイの新宿さぼてんでトンカツを食べる。調布駅で明日明後日のバスの時刻を確認した後、飲み物を買ってホテルへ戻る。翌日の試験は昼からなので遅くまで勉強して就寝。

 

2023年9月2日(土) 試験1日目

7階に泊まったので西側とはいえ朝日の反射が眩しく、結局6時台に目が覚めてしまう。ホテルの朝食を食べてゆっくりオフィスカジュアルに着替えつつ勉強もしつつ支度をする。9時半過ぎに早めに出発して10時ごろ調布駅からバスに乗り、早めに杏林大学に着いた。コンビニに寄ってお昼ご飯を調達して11時の開場直後に試験開場である杏林大学の講義棟へ入った。

・会場受付では受験票を提示して顔写真と本人の顔を照合されるため、顔写真を過度に加工したり、顔面を過度に加工して臨んだりしないようにしましょう。2日目は受付無しで会場に入れます。

・受験者の年齢は最も若くて29歳のはずだが、おそらく29-30歳+2年ぐらいまでの受験生は全体の6割程度と思われる。30台半ばあたりの多浪・再受験・学士編入組っぽい人が2割、あとは1割謎のおじさん、1割謎のおばさんっていう感じ(基礎研究者や転科した人もいるからだろう)

・事前にジャケットとネクタイは不要との連絡があったため、男性で最も多いのはボタンつきのワイシャツや青っぽいオフィスカジュアルのシャツに、黒のズボン、革靴であった。ただ、2割程度の人は柄付きボタンシャツだったり、ズボンが灰色だったりした。着慣れていないためか、シャツがズボンからはみ出したまま歩いている人が数人いた。1割未満の人はネクタイつきのホストみたいな黒服を着ていたり、アロハシャツだったりしたが、おそらく得点には全く影響しないと思う。

・女性の服装はいろいろだが、一応きれいめ地味な色のオフィスカジュアルにしている人が多かった。靴もスニーカーではなく綺麗目なやつを履いてる人が多かった。

・開場の11時から集合時間の12時までは、試験会場でご飯を食べたりスマホを見たり、参考書を開いたりできる。やはり病理診断クイックリファレンスを読んでいる人が多かった。

・12時以降はIII型試験→I型試験→面接の順番で行われるが、その間、スマホの使用や参考書類の閲覧は禁止される(常に試験会場内に試験委員がおり、一応監視している)。ふたつきのペットボトルは試験時間中も机の上に置いて飲むことができる。お菓子類などの飲食は休憩時間に許されており、多少鞄をガサゴソしてお菓子を取り出すぐらいは多目に見てくれる。

・試験時間中はプロジェクターでデジタル時計と試験時間(何時何分〜何時何分まで)が表示されるため、時間管理に困ることはない。スマートウォッチの普及に伴って、受験生が腕時計をつけることは禁止されている。

・試験時間中や、面接の待機時間にトイレに行くこともできる。手を挙げると試験委員の先生が迎えに来てくれてトイレまで引率してくださるのでちょっとした介護気分を味わえるかもしれない。僕の後ろの席の先生は1時間に1回以上は頻繁にトイレに立っていて、抗コリン薬を使ってあげたいなと思った。ちなみにトイレに行っている時間も試験時間にカウントされるので、延長してくれることはない。

・試験の合間の休憩時間は10分15分程度だが、みんなトイレに行く。今回は会場が講義棟5階だったが、各階にきちんとしたトイレがあり、4階や6階にも分散したのでそこまで混むことがなかった。

・試験の休憩時間においても、不要な私語は禁止されている(トイレや廊下で軽く知り合いに挨拶する程度はできる)。そのため仲良し同士で集まって大声で反省会を開き、まわりの人間を不安にさせるような受験者の発生は未然に防がれており、精神衛生上良い。スマホも取り出せないので、気になった事項のチェックも試験の休憩時間には行うことはできない。

・机は大学の講義室なのでかなり前後に狭く、目の前にパソコンとマウスが置かれるので、必然的に解答用紙は右利きならパソコンの右側に置いて書くことになる。そのため、実は後ろの席の受験者からは答案を覗かれるリスクがかなり存在する(横側や斜め後ろからは覗き見防止シートが貼ってあるため見られないと思う)。また、バーチャルスライドで特定の組織所見をアップで見ていると、後ろの席やそのまた後ろの席からは目が良ければ丸見えである。時間的余裕があまりない試験なので、他人の答案をカンニングしているほど余裕のある人ならそもそも受かるかもしれないが、選択問題の丸の位置などは下手したら見えてしまうかもしれない。

・試験で配られる問題用紙や解答用紙は全てA4サイズであり、問題用紙はホチキスで左上を綴じられて冊子になっている。

・III型試験は紙の問題用紙と、主病変副病変をまとめて書く用紙1枚(罫線あり)と、2つの小問の答えを書く用紙1枚(それぞれ解答欄はA4半分。罫線あり)と、フローチャートを書く用紙1枚(罫線のない紙)と、下書き用紙(罫線あり)だった。問題用紙と下書き用紙の記載内容は採点には含まれないと注意書きがあった。

・剖検マクロ写真のPDFは、各席のパソコンのデスクトップにパスワードロックのかかったファイルが存在しており、試験委員の指示でパスワード(jspなんちゃらみたいなやつ)を入力して解除して閲覧できるようになる。写真はA4 1/2から1枚程度のサイズでかなり大きい。バーチャルスライドは番号管理されたSDカードが各受験生に配布されて、それを差し込んでリムーバルディスク内のフォルダを開くと見られるようになっている。

・バーチャルスライドは浜松ホトニクスのNDPviewerで閲覧する。ウインドウ左側にマウスを持っていくとツールバーが出てくるので設定マークをクリックして初日に設定をいじっておくとよいです。ガンマ補正は1.0か0.9程度がおすすめ。マウス操作の慣性はゼロにしましょう。慣性で動いている間の画像はパソコン(レンタルのDynabookでした)の処理が追いつかないのでどうせよく見えません。矢印キーのスクロール範囲を固定する機能をオンにして、スクロール範囲を視野の50%程度にすると、標本全体をスクリーニングしたい時に矢印キーを使えるので便利です。

・あと絶対覚えておくといいのはNDPviewerにおいて、O(オー)ボタンを押すと、現在表示しているバーチャルスライド画像のあるフォルダ内の画像一覧が小さなウィンドウ内にサムネイルで表示されます。それをクリックすると見たい症例画像にすぐ飛ぶことができます。TabキーやShift+Tabキーを押すことで次の画像や前の画像に行ったり来たりもできますが、それよりも便利だと思います。

・試験時間が終わるとSDカードと問題用紙、解答用紙、下書き用紙は回収される。

・III型問題ではマクロ写真はPDFで、バーチャルスライドはNDPviewerで見るので、手元の問題用紙を見つつ、それぞれのウインドウを切り替えたりするのがちょっとしんどい。

・I型問題は写真問題。手元に問題用紙が配られるが、写真はパソコンのPDFで見る。

問題文は例えば

◯歳男性 3年前から増大傾向にある後頸部腫瘤切除検体

◯歳女性 子宮頸部切除検体

のような簡素なものが多いが、必要に応じて既往歴であったり手術歴や症状だったり、誘導となる情報が書かれていたりする(肝エキノコッカスの北海道渡航歴とか、直接的すぎるやつも)。写真問題なので、免染結果が写真で提示されることもある。

写真は横向きA4サイズのPDFに、4分割程度の大きさで各画像が添付されている。写真ファイルはデスクトップにパスワード付きのものが置かれておりIII型と同じ。写真といってもミクロ像とは限らず、マクロ画像だったり、フローサイトメトリーの結果グラフ(CLLを診断させる問題でCD5陽性、Bcellマーカー陽性を示していた)だったり、ヨード染色を施した食道ESD検体のマクロだったり、卵巣腫瘍の割面(線維腫)だったり色々である。

記述で答えるのが難しそうな問題は選択式になっていることがある。その場合は解答用紙に1)〜5)まで印字されているので該当の記号に丸をつけて解答する。

ちなみにそれぞれの問題の解答欄は、A4用紙の1行よりやや短い程度なので、多少の長文は頑張れば書けるが正答を書くだけならもっと小さくても大丈夫だろう。

・17時ごろから18時半ごろまで面接試験となる。チュートリアル室が面接会場となり、受験生は10人程度ずつ各ブースに振り分けられている。1人が面接ブースに入ると、その次の1人は試験会場の講義室から呼び出されて、面接ブースの扉の前の椅子に座らされる。前の受験者の声が大きいと、多少面接内容が聞こえてくるが、面接の内容から言っても大勢に影響は無いと思われる。

・試験会場から面接ブースに向かう際には荷物をまとめて退出するかたちになるので、その日はもう試験会場に戻ってこられない。試験委員の先生方がいちいち引率してくれるので大丈夫と思いますが、座席に忘れ物はしないようにしましょう。

・試験会場では最も最後の人になると最大1時間半程度待ち時間が発生するため、文庫本または新書を読むことが許されている(ただし、面接での試問対策になるような病理学関連の本は禁止されており、ブックカバーも禁止である)。まあ、前日に焦って本屋に向かって文庫本を買うぐらいなら、病理診断クイックリファレンスを穴があくほど読んだほうがいいし、実際の待ち時間は机に突っ伏して寝たり、お菓子を食べたり、自分の書いた答案のことを考えて不安になったりしているとあっという間に過ぎると思う。

・I型問題を解かされている間に、面接官(各ブースに教授クラスが2名ずつ)は自分の担当する受験者のIII型解答用紙を軽く採点している。面接官は模範解答のフローチャートや、問題となった症例の追加の特殊染色結果が印刷された紙、重要な組織所見がアップで印刷された紙などを持っており、受験者にそれを見せて試問してくることがある。

・面接会場は昨年の秋葉原では面接官側のみテーブルがあったらしいが、本年度は杏林大学チュートリアル室だったので、小さなテーブルが組み合わされロの字型に置かれており、窓側に2人の面接官が座って、ドア側に受験者が座るスタイルだった(つまり革靴を履いていても一瞬しか面接官には見えない)

・面接は10分間である。面接官の性格にも当然よるだろうが、まずは試験の感想を聞かれる。素直に「時間足りませんでした!」とか、「あそこの所見がよくわかりませんでした!」とか言って良い子アピールをしましょう。HEしか提示しなくてこの試験不公平ですよね!みたいなことをどうしても言いたいのであれば、婉曲したほうがいい(HEしかなくて難しくて…とほほでしたよみたいな。面接官もそこは理解しているはずなのであくまで和やかにしましょう)その後、受験者の答案において模範解答と比べて足りなかったポイントを、誘導質問だったり、試問だったり、あるいは直接指摘してくれる。NASHからHCCができたと考えたみたいだけど、NASHと考えた理由は何があるのかな?とか、一般的な大動脈解離の原因には何があるかな?(僕は嚢胞状中膜壊死の所見を答案に書けなかったので誘導してくれた)などである。そこで正答したりすると、加点がなされる(どの程度答案の不足を補ってくれるのかは不透明)らしい。とにかく面接官は加点させようとしてくださるので挽回のチャンスを無駄にしないことである。足りない所見を教えてくれたときは「ああー、そうだったんですね!勉強になりました!ありがとうございます!」というスタイルを貫くのが大事と思われる。

「どうして病理医になろうと思ったの?」のような雑談は、おそらく答案があまりにpoorだったり、逆にあまりに完璧で面接官が言うことがないと質問される可能性もあるかもしれないけれど、僕の場合は答案が雑だったので(?)10分間で一切脇道に逸れることはありませんでした。


・III型試験が終わる時間は受験生によってまちまちなので、そのまま流れ解散になる。なので早い人は17時過ぎに、遅い人は18時半過ぎに解放される。翌日8時開場の8時半集合なので、早めに寝なければいけないが、よほど完璧でない限り面接で不足部分を必ず指摘されるので、直後に心が落ち着いている人はほとんどいないと思われる。

・試験1日目の夜に気を抜いて夕食を楽しんだり遊ぶ人もいるが、II型問題の点数を上げたいならやはり病理診断クイックリファレンスの疾患を

「HE所見だけで」←ここ大事!!!

鑑別するにはどうしたらいいか考えるべきである。そして嬉しいことにI型問題で出題された疾患は翌日出る確率がかなり低いので、マトを絞った対策が可能になる。免染必須の疾患が出る可能性もやや低い。そのため勉強の追い込みをやっている人が実際はかなり多いと思われる。

僕は調布駅までバスで戻ってマクドナルドで夕飯を食べてホテルに戻り、テレビを見ながら結局1時近くまで勉強してしまった。寝落ちして2時に目が覚めて30分ほど追加で勉強して今度こそ寝た。

 

2023年9月3日(日) 試験2日目

・試験2日目は6時に目が覚めて、食欲があまりないなか、勿体ないのでホテルの朝食を少しだけ食べてチェックアウト。帰りに荷物をとりにくるつもりがあるならフロントで大きな荷物を預かってもらってもいいかもしれないが、僕は吉祥寺経由で帰ろうと思っていたので完全に荷物を持って試験会場へ向かった。7時にホテルを出て7時15分に調布駅からのバスに乗って杏林大学三鷹キャンパスへ。コンビニに寄ってエネルギーゼリーやジュースを調達してから8時前に会場に着いた。30分程度追い込みの勉強をして試験開始である。

・IIa、IIb、IIc問題はそれぞれ1時間で20問を解く。合間に15分のトイレ休憩があるが、前日同様私語やスマホ禁止である。参考書の確認も休憩時間は許されない。問題用紙は冊子で、解答用紙はA4が1枚で、バーチャルスライドはSDカードで配布され、試験時間が終わるとそれらは全て回収された。

・IIa、IIb、IIc問題はすべてHE1枚のバーチャルスライドで出題される。そのため特殊染色や免疫染色の画像は提示されない。60問中3-4問だけ、高異型度漿液腺癌の腹膜病変の出題で「p53陽性calretinin陰性」、あるいは子宮頸部幽門型腺癌の出題で「p16陰性」などが文字情報だけで問題文に示されていた。

・IIc試験は迅速凍結標本や針生検検体やバーチャルスライドになっている。IIa問題のびまん性硬化型乳頭癌とIIc型の細胞診問題はZ方向に+6〜-6μmまでピント調節ができるようになっていた(が、ピント合わせが面倒なだけで正直なところ要らないと思った)。

・12時半に試験が終わると、試験の質などについてアンケートを書いて終了。試験委員長の柴原先生が9月9〜10日の診断サマーフェストに500人参加してくれないと赤字になっちゃうよ〜んみたいなことを言っていたが、受験生はみな上の空で聞いていたと思う。自由記載欄に文句をいっぱい書く人がいそうだと思っていたのに、みんな早々に部屋を出て帰って行ってしまった。今後の試験のために改善点を書いてあげるべきだと思ったのでI型写真の大きさがA4の1/4で小さすぎると書いておきました。

 

その後は吉祥寺にバスで向かって同期と反省会と近況報告をしあって、帰ってきました。あー疲れた。落ちてたら来年も受けなきゃいけないけど、もう杏林大学はやめてほしいです。バスの時間が不安だし、2日目の朝の集合時間に間に合うような場所にあるホテルも少なすぎ。関東圏の受験者たちはおそらくだいぶ早起きして受験してると思いますね。